長年苦しんでいる痛みの治療~慢性疼痛へのアプローチ~
みなさんこんにちは、頭痛や痛みを専門におこなっている目黒区の洗足院です。
今回は、長い期間続いている慢性的な痛み、いわゆる慢性疼痛の治療についてご紹介します。
痛みって何?
痛みとは、病気であったりケガであったり、何かしらの原因で「痛い」と感じてしまうものなので、腰痛などの筋肉から始まり、不整脈などの心臓、痛みの記憶からくる心因性疼痛まで多岐に渡ります。
また、私たちは「痛み」を感じることで、身体に何らかの異常や異変が生じていることに気づきます。もし、「痛い」という感覚がなかったら、危険を察知したり、回避することができず、ケガや病気を繰り返したり、命の危険につながることもあります。
「痛み」は本来、私たちの身体や命を守る、生命活動に欠かせない役割を持ちます。
しかしながら、必要ではない痛みで、必要以上に長く続く痛みや、原因がわからない痛みは、大きなストレスになり、不眠やうつ病など、ほかの病気を引き起こすきっかけにもなります。このような場合は「痛み」そのものが“病気”であり、治療が必要です。
長く続く痛み~慢性疼痛~
この「痛み」の中で、なかなか良くならない痛みを「慢性疼痛」と呼んでいます。
慢性疼痛とは
慢性疼痛は「治癒に要すると予測される時間を超えて持続する
痛み、あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み」
と定義されています。
参照:厚生労働省 医療用麻薬による慢性疼痛の治療方針
慢性疼痛にはいくつかの分類方法があり、その中で痛みの要因別分類では、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、心理社会的疼痛があります。
神経障害性疼痛
ケガや病気で神経が傷つき、神経が異常に興奮して起こる痛みです。原因として、脊髄損傷や脳卒中などによる神経の損傷や切断、糖尿病の合併症による神経障害、がん細胞の神経への浸潤などが挙げられます。代表的な病気としては帯状疱疹後神経痛があげられます。
侵害受容性疼痛
からだに危険を伝える痛み(侵害受容性疼痛)とは、切り傷・火傷・打撲・骨折などのケガをするとその部分に痛みを起こす物質が発生します。この物質が末梢神経にある「侵害受容器」という部分を刺激することで痛みを感じるため、「侵害受容性疼痛」とよばれています。頭痛や歯痛、リウマチによる関節の痛みもこれに該当します。
心理社会的疼痛
心理社会的因子とは、言い換えれば「ストレス」のことです。 心身症におけるストレスは、その発症や経過、慢性化の要因のひとつとして考えられていて、生物学的には脳に作用して身体の機能、自律神経系や免疫系などに影響をおよぼすことによって、 関係するとされています。
慢性疼痛の分類
慢性対痛は、国際疼痛学会の慢性疼痛の分類で分けますと以下のような分類になります。
- 一次性慢性疼痛
- がん性慢性疼痛
- 術後痛および外傷後慢性疼痛
- 慢性神経障害性疼痛
- 慢性頭痛および口腔顔面痛
- 慢性内臓痛
- 慢性骨格系疼痛
慢性疼痛患者さんの特徴
この記事をお読みの患者さんの中には、これからご紹介する慢性疼痛患者さんの特徴に思い当たる節があると思います。
慢性疼痛患者さんは、痛み以外にも多彩な症状・釣行を伴っていることが多いという傾向にあります。
慢性疼痛患者さんは、病期が長くなるについれて痛み以外の様々な症状・症候をともなうことがあります。その代表的なものが抑うつ症状といわれています。
痛みというストレスが抑うつ気分を引き起こしているのか、抑うつ状態が身体症状として痛みを引き起こしているのかは未だに結論が出ていません。
痛みが長引くと、心理社会的要因との循環的相互作用により治りにくい、そして重症化する傾向にあり、痛みが難治化する場合には、破局的思考が関与していることが多いです。これにより、不動化や廃用などの徴候が出現し、日常生活に支障をきたしてきます。
そして、痛みが長期化することにより仕事や学業に影響が出てきます。失職等によって社会活動が低下し、家庭内での存在感の低下や経済的ストレスが、自己価値感の低下へとつながります。その結果、生活の質(QOL)の低下や生活障害をきたすという悪循環が生じてしまいます。
慢性疼痛の治療
様々な慢性疼痛の種類がありますが、長期化している痛みの治療では、NSAIDs やオピオイド鎮痛薬、抗うつ薬、漢方薬、ステロイドなどがあり、効果と副作用のバランスを考えて投与量の調節や併用を行うことになっていますが、痛みに「慢性」という文字が加わるくらい治りにくい病気です。
それでは、今まで薬を使って効果がなかった分、どうすればいいのかというと、当院がおこなっている痛み専門の鍼灸治療やショックウェーブ療法が有効です。
鍼灸治療の効果が期待できる作用機序、特徴は、痛みに対するアプローチを多方向からできることです。鍼灸治療は、
- 鎮痛系を介した作用
・オピオイド受容体を介した末梢性鎮痛
・ゲートコントロールを伴う脊髄性鎮痛
・下行性疼痛抑制系等による脳性鎮痛 - 鎮痛以外を介した作用
・Ia、Ib抑制を介した筋緊張の緩和
・局所、または全身の血流改善
・角化細胞を介した免疫・内分泌調整 - 神経伝達物質を介した作用
・セロトニン
・ノルアドレナリン
・ドーパミン
などの少し難しいですが様々な作用機序を同時におこなうことで「痛み」から開放することができます。
また、ショックウェーブ療法は、日本ではまだ少ないですが、整形外科、理学療法、スポーツ医学、泌尿器科、リハビリテーション、および獣医学など、幅広い分野で使用されている衝撃波を利用した最新機器です。
ショックウェーブは、筋筋膜・腱の疼痛緩和に即効性が高く、効率的な治療ができます。衝撃波は、体表面から照射することで、皮膚組織、結合組織、脂肪組織、筋組織骨組織など各組織において様々な影響を与えることが分かっています。
- 腱鞘炎
- 姿勢障害の改善
- 筋緊張緩和
- 血管新生効果
- ゲートコントロール理論による疼痛緩和
- 皮膚のコラーゲン生成
- トリガーポイント療法
- 浅筋膜・深筋膜の筋膜治療
衝撃波を利用したショックウェーブ療法は、上記のような効果が得られることで慢性疼痛の治療に役立てます。
帯状疱疹後神経痛や、手術後の痛み、五十肩の夜間痛、脊柱菅狭窄症による足の痛みなど慢性疼痛でお悩みの方は、痛み専門の鍼灸治療、ショックウェーブ療法をおこなってほしいです。