片頭痛に「鍼治療」って効果あるの?
片頭痛でお悩みの方は、PCやスマホ、コロナ禍でのリモート作業の普及に伴い年々増加しています。そんな中、頭痛薬ではなかなか良くならない患者さんも少なくなく、鍼治療を希望して当院へ来院する患者さんも急増しています。
片頭痛は、頭の片側が痛むことに由来しますが、実際には4割近くの片頭痛患者さんが両側性の頭痛を経験する三叉神経の痛みと言われています。
片頭痛は前兆の有無と種類により「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」などに分類されています。また、片頭痛は女性に多いのも特徴です。
前兆は、頭痛より前に起こる症状で、キラキラした光、ギザギザの光などの視覚性前兆が最も多くみられます。通常は60分以内に前兆が終わり、引き続いて頭痛がはじまります。
漠然とした頭痛の予感や、眠気、気分の変調などは前兆と区別して予兆といいます。一般的な頭痛薬が全く効かない場合は片頭痛の可能性が高いとも言えます。
今回は、そんな片頭痛に対して鍼治療って効果があるのか、なんで効くのかを科学的に検証した論文をご紹介します。
片頭痛に対する電気鍼療法を用いた末梢神経刺激による機能的連結性の修正:前向き臨床研究
Pain medicine(DOI: 10.1093/pm/pnac048)
この記事では、電気鍼療法によるC2末梢神経刺激の前後で片頭痛患者の機能的連結性(FC)を健常者と比較し、EA-C2-PNfSの効果を評価し、片頭痛のメカニズムを解明しました。
方法
片頭痛患者 26 名と健康な対照群 24 名が参加しました。全患者は EA-C2-PNfS の 3 か月前と 3 か月後に安静時機能的磁気共鳴画像検査を受けました。数値評価尺度、頭痛影響テスト、およびうつ病を評価する自己評価うつ病スケールを評価しました。健康な対照群は鍼治療を受けずに 3 か月間隔で 2 回磁気共鳴画像検査(fMRI)を受けました。疼痛マトリックスの関心領域における FC の分析が行われました。
※fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)とは、MRI(Magnetic Resonance Imaging)の技術をもとに、脳を対象とした断層画像を取得するための装置・技術です。
MRIは放射線を用いず、磁石による磁場と電波を用いて、生体外部から組織を画像化する装置・技術です。
なお、MRIでは磁力はT(テスラ)で表され、医療用では0.5~3T、研究用では7Tのものが存在し、人体にも使える世界最高磁力のものだと9.4Tがあります。
※電気鍼とは、鍼を刺し、そこに電気を流す治療です。電気の強さは、患者さんが苦痛にならないように調節しますので痛くはありません。むしろ気持ちいいですよ。
この研究では、C2という第2頚椎部分の神経に反映する場所に電気鍼をしています。
結果
片頭痛患者20名と健常対照群23名(平均±標準偏差:44.9±12.9歳)が対象となった。前兆のある片頭痛患者3名(55.0±18.0歳)、前兆のない片頭痛(MWoA)患者11名(45.6±14.6歳)、慢性片頭痛患者6名(40.8±13.9歳)であった。臨床評価は、EA-C2-PNfS後にMWoA群のみで有意に改善した。FC分析では、MWoA群はEA-C2-PNfS後に右視床下部と左島の間のFCの有意な減少を示した。右視床下部関連FCは、慢性片頭痛群の方がMWoA群よりも鍼治療前は低かった。
結論
MWoA に対する EA-C2-PNfS 後、視床下部と島皮質の FC に有意な変化が観察されました。私たちの結果は、EA-C2-PNfS が疼痛関連 FC を修正することで片頭痛を改善できることを示しています。
結局、片頭痛に鍼治療って効果あるの?
一般の方には少し解釈難しいかもしれませんが、「鍼治療による臨床症状の改善には、FCの変化が伴う可能性があり、その作用機序としては、C2脊髄神経枝を介し、三叉神経脊髄路核や視床下部を経由して疼痛関連領域の活動性を調整している可能性がある」と分析しています。
もっとわかりやすく言うと、片頭痛は、一般的な筋肉の緊張型頭痛とは異なり、三叉神経痛に分類されるため、鍼治療をおこなうことで三叉神経の繊維を刺激して痛みが改善されるということです。
片頭痛にお悩みの方は、1日でも早く片頭痛専門の鍼治療をおこないましょう。
当院の頭痛外来では、予約制で様々な頭痛の治療をおこなっています。お気軽にご相談ください。